会社概要
明治五年の創業以来、林金物は皆さまに支えられ、現在の店主で7代目となります。
明治の時代から150年弱、世界中にMade in JAPANの包丁をお届けしながら、徳島の地にてご家庭で使う刃物や飲食店の皆さまの包丁の研ぎやメンテナンス・ケアに携わって参りました。
AIや自動化により人の仕事が奪われるであろうと言われる現代、テクノロジーが発達し、人の手によるモノづくりが少なくなってきている昨今だからこそ、あえて手仕事にこだわった「本当に質の高い」と言える製品だけをみなさまにお届けし続けて参ります。
会社名 | 林金物有限会社 |
---|---|
住所 | 徳島県徳島市西新町一丁目25 |
設立 | 1872年(明治5年) |
代表者 | 代表取締役 林 郁夫 |
info@hayashi-hardware.com | |
TEL | 088 - 652 - 2219 |
事業内容 | 包丁を中心とした自社製品の製造販売 |
代表インタビュー
林金物が徳島に創業して148年。老舗金物屋となった林金物の7代目店主である林 郁夫氏に、刃物に対する想いやこれまでの思い出、金物屋として大切にしていることなどをインタビュー。
林 郁夫 Ikuo Hayashi
Q
林金物の7代目店主になられて30年以上とのことですが、そもそも刃物に興味を持ったきっかけや思い出はありますか?
子供の頃は「値段の高い刃物はよく切れる」と思い込んでいて、親の目を盗んで店のショーウィンドウの中にある一番高い包丁を持ち出して、段ボールを切ってみたことがあるんです。でも、まったく切れなかった。
包丁にまだ刃が付いていなかったわけですが、その時に「なぜだろう?」と思い、刃物や「切れる」ということのロジックを自分なりに勉強しました。今思うと、そのことが刃物に興味を持つ一番のきっかけだったのかもしれません。
いつだったか、包丁や鋸(のこ)や玄能(げんのう)の製作現場で製造過程を見学させてもらった時の衝撃は今でも忘れません。
一見すると乱雑で非合理的に見え、実はとても合理的な製造現場。目に見えないミクロン単位でのゆがみの調整や、角度の調節。緻密すぎるほど細かい作業。1つの道具を仕上げるための何十、何百もの工程が、職人のこだわりとして肌で感じられたことを今でも覚えています。
刃物は勉強すればするほどどこまでも奥が深く、死ぬまで勉強なんだなと今でも実感しています。
Q
独学で刃物研ぎを学んだとのことですが、それはどのくらいの時期だったのですか?
とある研ぎ職人の作業場で何時間も仕事を見ながら、見様見真似で覚えようとしたのが約35年前です。
研ぎ職人の方がやっているその通りにやっても切れない。なにが違うのか全くわからない。なので、まずそこを追求するところから始まりました。
今思うと当時の自分の浅はかさを思い出して恥ずかしくなるのですが、刃物研ぎって正直見た目は簡単そうに見えるんです。作業だけで言うと、砥石に刃を押し当てて前後にこするだけなので。でも、実は目に見えないとんでもなく奥深い技術なんですよ。自分の手を通した感覚で学び、数をこなすことで技術を上げていかなければならないし、経験を重ねることでノウハウを身につけていくしかないんです。
普段あまり磨きの依頼が来ないような特殊な包丁をお持ちになられますと、いまだに試行錯誤しながら「どうやったらうまく研げるだろうか」と勉強と研鑽の日々を送っています。
Q
今まで沢山の刃物の研ぎ依頼を請けてきたと思いますが、刃を研いでいるときはどんな思いでやられているのですか?
私個人としては、「刃物なんだから切れてなんぼ」と思っています。長い間刃物研ぎをしていますが、初心を忘れることがないように「まだまだ自分は未熟なんだから」と常に言い聞かせ、どの包丁も一本入魂で丁寧に研ぐように心がけています。砥石も研ぐ刃物やその状態にあわせて使い分けられるよう、常時8種類を用意しています。
弊社での研ぎはほぼ全行程が「手研ぎ」の作業で非常に手間はかかるのですが、仕上げた後の試し切りで「スパッ」と引っかかることなくまるで空を切るような感覚を得られた瞬間は自分にとって至福の時間でもあり、「この包丁をお客様のもとに届けられたときにどんな反応をするだろう?」「切れ具合に満足してくれるだろうか?」と想像を膨らませるといつもワクワクが止まりません。
Q
店をやっている中で、何か印象に残った出来事はありますか?
ある時お婆さんが店に訪ねてきて、「あんたが40年前に勧めてくれたこの毛抜き・・・いまだに使ってるんよ!」と嬉しそうに昔買っていただいた毛抜きを見せてくれました。未熟な自分が販売した道具を、40年もの長い間大事に使ってくださっていることに胸が熱くなりましたね。
またある時は、「昔、私が嫁入りする時にあんたのお父さんが勧めてくれて買った包丁あるんだけど、研いでくれる?」と来店されたお婆さんからご依頼いただきました。先代店主から代替わりしてもう40年近く経ちますので、そのくらい前にご購入頂いた包丁だと思います。
時間が流れて歴史を重ね、それと同時に道具を介して人が紡がれていく。
時が流れてもずっと大事に使っていただける道具をご提供させて頂けているというのは、何か心がジンとくるものがあるとともに、職人として世の中に良い道具を広めていく使命のようなものを切に感じさせてくれますね。
Q
今後についての想いをお聞かせください。
150年弱という長い年月、この徳島の地で金物屋を営んできたことで、ありがたいことに「徳島で刃物といえば林金物」と思い出していただけるお客様が多くなってきました。
昨今、日本の刃物が世界中で認められ評判が広がっています。小さい頃から刃物に魅了され、刃物を売る商売に携わってきた身として、日本全国や海外の方々にもっと日本の刃物について知ってもらいたい。
特に海外の方々には誤っている日本の刃物の知識を広げるわけにはいきませんし、色々な方々からの刃物についてどんな小さなご相談やご要望にも真摯にお応えできるよう、現状に満足せずさらに勉強と研鑽を積み重ねていきたいと思っています。